「おとり広告」の規制概要及び不動産業者の留意事項
T 「おとり広告」の規制概要
1 表示規約違反となる「おとり広告」
表示規約第21条(おとり広告)では、事業者(以下「不動産業者」という。)は次に掲げる広告をしてはならないと規定している。
(1) 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
(2) 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
(3) 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示
なお、「おとり広告」に関しては、公正取引委員会が昭和55年公取委告示第14号として指定している「不動産のおとり広告に関する表示」がある。この告示は、原則、不動産公正取引協議会に加盟する不動産業者であるか否かにかかわらず、不動産業者のすべてに適用されるが、表示規約と規定振りに若干の相違があるものの内容は同一である。
2 「おとり広告」の態様(例示)
「おとり広告」がいかなる態様のものかは、公正取引委員会が定めた「『不動産のおとり広告に関する表示』の運用基準」(昭和55年6月事務局長通達第9号)に例示されているので、これを表示規約に援用して示すと次のとおりである。
(1) 「物件が存在しない」場合の例示(表示規約第21条第1号)
ア 広告、ビラ等に表示した物件が広告、ビラ等に表示している所在地に存在しない場合
イ 広告、ビラ等に表示している物件が実際に販売又は賃貸しようとする不動産とその内容、形態、取引条件等において同一性を認めがたい場合
(2) 「実際には取引の対象となり得ない」場合の例示(表示規約第21条第2号)
ア 表示した物件が成約済みの不動産又は処分を委託されていない他人の不動産である場合
イ 表示した物件に重大な瑕疵があるため、そのままでは当該物件が取引することができないものであることが明らかな場合(瑕疵があること及びその内容が明瞭に記載されている場合を除く。)
(3) 「実際には取引する意思がない」場合の例示(表示規約第21条第3号)
ア 合理的な理由がないのに広告、ビラ等に表示した物件に案内することを拒否する場合
イ 表示した物件に関する難点をことさら指摘する等して当該物件の取引に応ずることなく顧客に他の物件を勧める場合
3 インターネット上の「おとり広告」
インターネット上の広告(自社のホームページ又は不動産情報サイト事業者が運営する不動産情報サイト等に掲載するもの)も、表示規約第4条にいう「表示」に当たる。したがって、不動産業者がインターネット上で、上記の1及び2のような実際には取引することができない物件の広告を行えば、表示規約第21条に違反する「おとり広告」となる。
U インターネット広告における不動産業者の留意事項
最近、インターネット上の広告における「おとり広告」が増加しているところ、これら事案には共通した違反行為の態様と発生原因がみられる。
不動産業者が「おとり広告」の未然防止を図るためには、前記Tの「規制概要」を理解するとともに、以下に例示する共通した「おとり広告の具体的な態様」と「発生原因」とに併せて、インターネット広告における必要な表示事項である「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」に対する考え方について、それぞれ留意する必要がある。
1 インターネット上の「おとり広告の具体的な態様」
当協議会が過去に規約違反として措置したインターネット上の「おとり広告の具体的な態様」は、以下のとおりである。
[1] 適切な更新を怠ったために、掲載途中から取引不可能になった例
最初にインターネットに広告を掲載した時点では、取引することができる物件であったが、掲載後に成約済みとなった物件を削除することなく更新を繰り返す等、適切な更新を怠ったために、長期間(表示規約に違反する事案をみると、いずれの事案も広告時点の1か月以上前に成約済みとなっている物件が含まれている。)にわたり、実際には取引することができない物件となっていたもの。
[2] 当初から成約済みであった物件をインターネット上に掲載していた例
成約済みの物件を、成約状況等を適切に確認することなくインターネット上に広告を掲載したことから、実際には掲載した当初から取引することができない物件であったもの。
[3] 架空物件をインターネット上に掲載していた例
事例として多くはないが、不動産業者が一般消費者の関心を引くために、まったく架空の格安物件や既に入居者が存在する成約済みの物件をもとに賃料を安くするなどした架空物件を掲載したことから、実際には取引することができない物件であったもの。
2 発生原因
上記1のインターネット上の「おとり広告」の発生原因を考察すると以下のとおりである。
[1] 不動産業者の「おとり広告」に対する理解が不十分であること
一部の不動産業者は、インターネット広告については、表示規約の適用がない媒体であるとか、規制が緩い等の誤った解釈をしており、表示規約の「おとり広告」に対する理解が不十分であるという状況もあった。当協議会では、ホームページ、公取協通信(毎月発行)等で表示規約の解説や違反事例の紹介をするほか、当協議会の構成会員団体においても、会員の不動産業者に対する講習会や研修会を開催して、表示規約の普及に努めているので、これらに積極的にアクセス及び参加するなどして理解を深めていただきたいと考える。
[2] インターネット広告に係る一般消費者の認識についての不動産業者の意識が希薄なこと
インターネット広告は、更新が容易であるという特性があり、著名なインターネット通販サイトが、在庫をリアルタイムに更新していること等から、一般消費者は、通常、常に新しい物件の広告が掲載されており、広告された物件は実際に取引することができるものと認識するのが一般的であると考えられる。 このため、不動産業者は、一般消費者の認識を理解して物件の広告を行う必要があると考える。
[3] 不動産業者が管理能力を超えた多数の物件広告を掲載していること
インターネット広告において「おとり広告」となった事案では、これを少人数でしかも管理能力を超えた多数の物件を掲載していたこと、これらの管理をアルバイトに任せっきりにしていて責任者によるチェックを怠っていたことなどを挙げることができる。不動産業者は、適正な物件数の掲載と責任者による管理とが必要不可欠であると考える。
[4] 新規掲載時又は更新時に物件の成約状況等の確認を怠っていること
不動産業者は、上記[2]に記載した一般消費者の認識を理解すれば、成約状況等の確認を怠り、成約済みの物件を掲載したり、成約済みとなっているのにそのまま更新するといったことがあってはならないことを肝に銘ずべきであると考える。
3 インターネット広告における「次回の更新予定日」の位置づけ
「おとり広告」をしないためには、新たに情報を登録する際の成約状況等の確認は必要不可欠であり、情報登録日又は直前の更新日(以下「情報登録日等」という。)以降も、原則、リアルタイムに、成約状況の確認を行い、成約済みの物件を削除することが最善であると考えられる。
(1) 「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」を表示している場合
一般消費者は、通常、「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」の記載があれば、この期間内に成約済み等となった物件がある場合には、「次回の更新予定日」に削除されると認識するものと考えられる。
表示規約は、一般消費者の「次回の更新予定日」に対する認識をこのようにとらえた上で、「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」をインターネット広告における必要な表示事項としている。このことは、「次回の更新予定日」までの期間が長期にわたらないことを前提として、この期間内に成約済み等となった物件があっても、原則、「おとり広告」として取り扱わないという趣旨である。
しかしながら、この期間が長期となっている場合は、当該広告に対する一般消費者の信頼度が低くなるだけでなく、成約済み等となった物件がそのまま掲載され続く可能性があり、これらを必要表示事項とした趣旨に反するので、不動産業者は、できるだけこの期間を2週間程度まで短縮し、「次回の更新予定日」には、当該物件が成約済みとなっているか否かはもちろん、取引条件等の情報の内容に変更がある場合も確実に更新することが求められていると考える。
(2) 「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」を表示していない場合
一般消費者は、通常、「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」の記載がない場合は、掲載されている情報がリアルタイムで更新されており、掲載されている物件は、その時点で実際に取引することができる物件であると認識すると考えられる。
したがって、「情報登録日等」及び「次回の更新予定日」の記載がないのにもかかわらず、成約済み等の物件を掲載している場合には「おとり広告」に該当するおそれがある。
(3) 「次回の更新予定日」を「随時」と表示している場合
一般消費者は、通常、「次回の更新予定日」を「随時」と記載している場合は、成約済み等となった物件について削除する等の対応を速やかに行っているという意思表示をしているものと認識すると考えられる。
したがって、「次回の更新予定日」を「随時」としているのにもかかわらず、リアルタイムに成約済み物件か否かを確認することなく、成約済み物件を掲載したままにしておくと「おとり広告」に該当するおそれがある。
【参考:違約金課徴及び厳重警告案件に占めるインターネット上の「おとり広告」の割合】
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